株式市場の語りびと
株式市場で起きていることは、すべて原因があって結果がある。その原因を科学的に分析することを目的とする。
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 金融バブルであっても産業バブルではない
今年は良い年になると考えます。
古い英国の経済の教科書の格言には「産業恐慌は必ず金融恐慌を伴うが、金融恐慌は必ずしも産業恐慌を伴わない」とあります。
今回はまさに、この「金融恐慌は必ずしも産業恐慌を伴わない」が当てはまると思います。
 今回の金融恐慌は2008年9月の「リーマン破綻」がきっかけで発生しました。
リーマンが救済されなかった理由は「破綻する全ての金融機関を救済すると、きりがない(モラルハザード懸念)」(グリーンスパン前米連銀議長)でした。それは日本の1990年代の「失われた10年」への米国当局のトラウマであった可能性が高いと考えます。
97年の「山一破綻」の日本の経験で思い出されるように、受け皿なく破綻・精算される時の衝撃度は凄まじいものがあります。リーマンはその20倍近い規模があり、約64兆円の資産、約61兆円の負債が整理・精算・売却されることとなりました。
 結果はご承知の通り「世界的金融不安の連鎖」「強烈な信用収縮」「投資資金の一斉回収」→「株価暴落」「原油急落」など、ありとあらゆる市況が暴落しました。
 モルガンスタンレーのワールド株価指数のグラフAのように、世界の株価は07年末比で約5割値下がりしましたが、その5割のうち3割部分が「リーマン破綻」以降の2ヶ月に集中したことになります。
MSCI.png
 1月8日のブログ「自動車株中心の上昇シナリオ」に述べられているように、10月以降世界経済が大きく底割れすることになった悪役は「自動車」業界でした。世界の富裕層の損失、金融マン大量解雇に伴う高級自動車の需要低迷、米ビッグスリー信用不安による買い控えなどの他に、最も大きな理由は上述の金融恐慌により「自動車ローン」が付かなくなったことです。
 ジャストインタイムのトヨタカンバン方式の自動車産業の生産体制は、在庫増加による時間的緩衝材にならず、メーカーがすかさず「生産調整」を行ったことから、失業者が急増し、所得が減り、消費が急減し、「金融危機」発生がたちまち「実体経済」を悪化させてしまったわけです。
 異常事態には、あらゆるシステムは機能しなくなります。
金融においては、リスク管理のためのBIS(世界銀行)の自己資本規制が、金融危機による急激な自己資本毀損という異常時にはマイナスに機能して、殆ど銀行の与貸業務がストップする事態になっています。
最近のマスコミ論調は余りにも激しい急落のために「バブル崩壊」という一言で原因を説明しようとしてます。確かに「バブル崩壊」と一言で片付ける方が簡単です。
しかし、どう考えても、どのように思い出しても、昨年に、物作りの実体経済が風船のようにパンパンに膨らんだ「バブル経済」であったという感覚も、確証もありません。
米国の住宅バブル説についても、米国の人口が過去10年間で2.5億人から3億人に増えたことを踏まえて、米商務省の住宅着工件数を長い時系列で追っていくと、バブルになるほどに家が建てられた数字がないのです。したがって、「住宅金融バブル」であって「住宅建設バブル」ではないということになります。冒頭の教科書の格言「産業恐慌は必ず金融恐慌を伴うが、金融恐慌は必ずしも産業恐慌を伴わない」が今回当てはまることになります。

 このように突き詰めていくと、金融工学による金融バブルは発生しましたが、産業バブルは発生していないという結論に到達します。
リーマンショック直前の需要がバブルでなかったとしたら、大きく景気が減速する理由もないわけです。したがって企業の減産は長期化しないということになり、そうであるならば、今後景気が回復し株価が戻るには「生産の回復」が必要と言う結論になります。
そして「金融バブルであって産業バブルではない」という認識のもとに銀行に資本注入し、「生産の回復」のため、世界中の政府・金融当局が「あらゆる手段を駆使」して需要喚起策を講じているのだと思います。
生産が増えれば、雇用が増え、所得が増え、経済が拡大し、株価も回復します。
世界的にこれだけ猛スピードで大規模な政策が総動員され、やるべきことに手が打たれ、回復への道筋がまがりなりにも見え始めてきたのは、皮肉にも「リーマン破綻」があったからこそと言えます。
 2009年の景気はきっと厳しいものでしょう。しかし、それに対して、やり過ぎと思われる程の景気対策が現在講じられています。そしてこのような政策支援は景気が回復するまで続くものと思われます。したがって仮に2009年がダメでも2010年には回復してくると考えるのが妥当です。

 しかし、株式市場では「今後4年−5年は企業の赤字が続く」ことを前提としたような理不尽な株価になっています。長期投資の観点から見れば、現状は非常に投資妙味の高いタイミングにあると考えています。
オバマ経済対策は2月中旬にずれ込みそうですが、短期的相場はそれがピークだとしても、その後も経済刺激政策が続くことから、やはり高値を更新していくものと考えます。
米国はPERですすみ、日本はまだPBRの世界ですすむと思います。
デフェンシブ株は終わり、景気敏感株にスイッチが必要と考えます。
(注意:本稿は投資家のために投資判断を行うものではなく、一切の責任を負いません)
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